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2011年11月12日 (土)

自宅外でNICOLAを運用するには(上)(親指シフト導入記19)

1 3つの適応類型

 NICOLAをマスターしたユーザーが頭を悩ませる最大の問題は、職場などのパソコンでどう親指シフトを運用していくか、ということである。これについては、以下の3つの適応類型が考えられるだろう。

  1. 自宅と同じ運用環境(3点セット)を整える
  2. 擬似的な運用環境を構築する
  3. NICOLAの運用を断念する

 このうち、親指シフターにとってもっとも望ましいのが、1であることは言うまでもない。しかし、自宅と全く同じ環境を職場などの公共空間で構築するのは、きわめて困難である。(注)

 (注)もちろん自前のノートパソコンなどを持ち込めるのなら話は別だが、情報漏洩などを防ぐために、そうしたことを禁じている組織も少なくないと聞く。

 また、専用キーボードを個人的に接続するのはともかく、Japanistをサーバ型のパソコンに導入することは、(経営陣に親指シフターかJapanistマニアでもいない限り)きわめて難しいと考えてよいだろう。

 となると、2の「擬似的なNICOLA運用環境を構築する」か、3の「NICOLAの利用を断念して、元の入力スタイルに戻る」かに、選択肢は限られてくる。

 そこで、まずは2のケースについて個別に検討していくこととしよう。

2 専用キーボードの持ち込み

2・1 サム・タッチという落とし所?

 幸い、現在はキーボードもUSB接続のものがほとんどであるので、親指シフト専用の機種であっても、会社などのパソコンに接続できる可能性は高い(USB端子に接続すれば、通常のJISキーボードとして認識されるはずである)

 もちろん、本来であれば据え置き型のキーボード(FMV-KB232)を導入するのが望ましい。NICOLAで入力するなら、ある程度広めのキー・ピッチと深めのキー・ストロークが不可欠だからだ。

 しかし、公的な場では盗難の恐れがあるし(KB232はかなり高価なので)、持続的な使用が望めない環境(開放型のメディア室とか)で作業せざるを得ないケースも少なくないだろう。

 となると、持ち運びが可能なサム・タッチあたりを利用するのが、妥当な落とし所ということになる。料金も据え置き型の半額程度だし…(といっても1万5千円とかなりの割高ではあるのだが(汗))

 まあ、日常的に持ち運ぶにはかさばるサイズだし、機能キーの一部がオミットされるなど、様々な点で「中途半端感」が否めない機種ではあるが(笑)、専用キーボードの選択肢が限られている以上、そこは我慢するしかなさそうだ。(注)

 (注)もちろん、据え置き型の設置が可能で、かつ、懐具合に余裕がある場合は、KB232をもう1台購入して、それを運用すればよい(ただしその場合は、盗難防止対策をすることを忘れないこと

2・2 JISキーボードで代用?

 「NICOLAの初心者は、専用キーボードとJapanistの3点セットで練習に励むべし」というのが筆者の持論だが、親指シフトで自由に入力できるようになった中級以上のユーザーについては、この限りではない

 与えられた環境のJISキーボードでもNICOLAの入力が可能であれば、それをそのまま使用すればよいだろう。

 ただ繰り返すが、窮屈な指遣いでの入力を続けていると、ベテラン・ユーザーといえども、肩凝りなどの身体的不調を来して、作業効率を落としてしまう可能性は否定できない。

 そうした事態を避けるためにも、できれば専用キーボードを導入するよう努めた方がいいと(個人的には)思っている。(注)

 (注)様々な理由でそれが難しいようなら、「親指シフト向きのJISキーボード(ないし、それを搭載したノートパソコン)」でカバーするという手もある。
 なお、親指シフト向きのJISキーボードについては、こちらの記事こちらのサイトなどを参照のこと。

3 エミュレータの利用

3・1 やまぶきRとその限界

 もちろん、専用キーボードを接続しただけではNICOLAは利用できない。本来であればJapanistを使いたいところなのだが、(上でも書いたように)サーバ型のパソコンに私的なソフトをインストールするのはまず不可能だろう。

 そこで、親指シフトエミュレータの登場ということになる。筆者が使用しているのは「やまぶきR」だが、このソフトはインストールしなくても利用できるので、USBメモリーなどから起動してやれば、公共のパソコンでも親指シフトでの入力が可能となる。(注)

 (注)やまぶきRのインストールや設定方法については、こちらの記事を参照のこと。

 ただし、WindowsのVista以降でやまぶきRを通常権限で実行しているときは、管理者権限で動いているアプリに対してキーの入れ替えが効かない。その場合は、やまぶきも管理者権限で実行する必要がある。

 また、やまぶきでは一部の機能キーの入れ替えはできないので、たとえば「CapsLock」と「左Ctrl」を入れ換えたければ、別のキー入れ替えソフトを使用しなければならないようだ。(注)

 (注)ただし、ほとんどのキーカスタマイズ・ソフトは、レジストリを書き換える方法を取っている。このため、管理者からOKでももらわない限り、サーバ型のパソコンでCapsLockとCtrlを入れ換えたりするのは、きわめて困難と言えるだろう。

3・2 DvorakJ

 このように「やまぶきR」を会社などで利用しようとする場合、かなり機能が制限される可能性がある。それが不満な場合は、別のエミュレータを試してみる手もありかもしれない。

 たとえば「DvorakJ」というソフトは、やまぶきRと同様、USBメモリから起動できるだけでなく、CapsLockキーをCtrlキーとして使うことも可能であるらしい(かなりアクロバティックな方法ではあるが)(注)

 (注)詳細についてはこちらのページを参照。ただし、Ctrlとして機能するのは文字キーとの同時打鍵に限られているなようだ。

 ただ、DvorakJが管理者権限のアプリでも有効に作動するかどうかは定かではない。この点については、識者のご意見を聞きたいところである。

3・3 プチ対策

 このように、サーバ型のパソコンではエミュレータの作動がかなり制限される可能性が高いことは、あらかじめ覚悟しておいた方がいいだろう。ただ、以下のような手段を講じることで、その制限を多少は緩和させることは可能かもしれない。

・USB起動のソフトを利用

 たとえば文書の下書きなどは、やまぶき等と同様、USBメモリから起動できる私用のエディタ(WZなど)を使用して、清書はパソコンに内蔵している(管理者権限で作動している)ソフトを使う。

 そうすれば少なくとも下書き段階では、NICOLAでの文章入力が可能となるはずである。(注)

 (注)もちろんこの場合、清書段階での親指シフトの利用は、ほぼ断念しなければならないだろう。
 しかし、ちょっとした推敲を施したり、印刷用に文書の体裁を整える程度であるなら、ローマ字入力で作業をしてもさほど能率を落とさずに済むのではないだろうか。
 ちなみに、「文書作成は基本的にエディタで行い、印刷などの体裁を整える作業のみワープロで行なう」というという、(知的)生産性をアップする上で当然の方法が、日本の職場(事務系)では案外採用されていないようだ。
 これについては、鐸木能光『新・ワードを捨ててエディタを使おう』などを参照。

・左Ctrlに頼らない?

 また、 CapsLockとCtrlの入れ替えが不可能であることを前提に、ふだんからソフトのショートカット(機能)キーは左Ctrlではなく、Shiftキー等とのコンビネーションでまかなうようにする、という手もありかもしれない。

 たとえばJapanistでは、デフォルトでは「Ctrl+変換(無変換)」に「入力予測の次候補(前候補)移動」が割り当てられているが、これを「Shift+変換(無変換)」に変更するのである(他の機能のキー定義も適宜、変更しておく)

 こうして普段から左Ctrlに頼らない操作法をマスターしておけば、キーの入れ替えができない場合でも、さほど作業効率を落とさずに済むのではないだろうか。(注)

 (注)もちろん、デフォルトの(左Ctrlキーの)配置に身体を無理やり慣らしてしまうという手もあるわけだが(おそらく多くの人がそうしているのだろう)、たかがキーボードにそこまで合わせなければならないというのも、どこかおかしい気がする。
 道具というのは本来、人間の動作に叶うように作られるべきものであって、人間の方が自分の身体を道具に從わせなければならないというのは、疎外状況以外の何者でもないからだ。

 とまあ、こんな感じでいろいろとやり繰りしていけば、100%とまではいかないまでも、本来の操作性の7割程度?はカバーできそうな気がしてくる。

 他に職場などでNICOLAを運用するための良い工夫やメソッドがあったら、ぜひ当方までその手法をご教授いただきたいところである。

 (以下、次号)

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