« 習熟過程についての理論的考察(親指シフト導入記17) | トップページ | 自宅外でNICOLAを運用するには(上)(親指シフト導入記19) »

2011年11月11日 (金)

英文/外來語入力への対処法(親指シフト導入記18)

 NICOLAの弱点については既に様々な人が様々な指摘をしているが、筆者自身が特に問題だと感じているのは、英文(正確には半角スペース)と外來語(特に小さいア行を含んだ文字列)の入力がしにくい点である。

 今回の記事では、これらの問題に対する筆者自身の対処法について紹介することにする。かなり原始的な?方法なので、どうか笑ってやってください。

1 英文入力について

1・1 空白(Space)キーの打ちにくさ
・JIS(英文)キーボードとの違い

 ローマ字入力ユーザーがNICOLA(専用キーボード)での入力に挑戦する際、最初にとまどうことの一つが、空白(Space)キーの位置と操作だろう。

 現在普及しているJISキーボードでは、最下段中央部のキーの並びが「無変換・空白・変換」となっており、かつ、空白キーがどっかりと広い幅を取っているタイプのものが多い。

 こうしたキーの配置に合わせて、IMEも空白キーで変換操作を行うものが主流となっている(その代表格がATOK)

 こうしたキー配列&入力スタイルに慣れた人にとっては、専用キーボードの「無変換・変換・空白」という最下段の並びに慣れること自体が、まずは一苦労であろう。

・日本語ではあまり使わない?

 しかし入力練習を始めてすぐに気づくのが、日本語の文書ではあまりこのキーを必要としないということ。

 頻出するのは段落冒頭の一字下げくらいで、文中で使用するという機会は(特殊な文章でない限り)ほとんどないのではあるまいか?(注)

 (注)その特殊な例のひとつが、タイプ練習用の文章(文字列)である。「親指シフトキーボード入門」の例文などはまさにその典型で、「はとは ときと きいき」のように文中で空白を入力させる形となっている。
 もちろんこれには、空白キーの位置に慣れさせるという教育的意図も働いているのだろう。しかしやや窮屈な指遣いを余儀なくされるので、反復練習を重ねるうちに疲労が蓄積されていき、肩凝りなどの身体的不調を招いてしまうこともあるかもしれない。
 タイプ練習の際に空白キーの入力がしんどいと思ったら、遠慮なく飛ばして次の文字列を入力すればよい。空白キーについては、通常の文章(の字下げ)を入力しているうちに、自然とその位置と指遣いを覚えてしまうだろうから。

 それならば空白キーは少し脇に退いてもらって(笑)、二本の親指には存分に別の機能(変換・無変換/同時打鍵)を担ってもらおう。おそらくはそんな感じで、下段のこの並びが生まれたのだと思う。

・英文では多用する

 ところが英文(欧文)では文中でもスペース入力を多用するので、この並び(無変換・変換・空白)のままでは打ちにくいことこの上ない。

 またJapanistを使用している場合、日本語入力時のクセで変換キーを押してしまい、する必要のない変換操作に入ってしまったり、(シフトキーで一時的に英数モードにしている場合は)かなモードに戻ってしまったりといった不手際も生じがちだ。

 では、こうした状況にどう対処すればよいのだろうか?

対策1 英文入力用の環境スタイルを設定する(英字入力がメインの場合)

 まず、英文入力がメインになる文書(英文記事やプログラミングなど)を作成する場合は、ある意味で対処法は簡単である。事前に英文用の環境スタイルを作成して、その設定で入力を行えばよいのだ。

 たとえばJapanistの場合は、動作環境の設定を以下のようにしてやれば良いだろう。

・文字入力

 初期入力状態で「文字幅」を半角、「ローマ字/かな」では「かな」を選択する(ローマ字を選択すると、変換されるなどしてうまくいかない

 直接確定文字については、かな入力時の変換に備えてチェックを外しておくのが望ましいが、英文入力に特化するなら半角英字・数字・記号にチェックを入れても構わないだろう(ただし、予測変換などはできなくなる)

Eibun_mojinyuryoku

・変換

 「記号入力による自動変換」で、全ての項目にチェックを入れる。コンマやピリオドを入力すると自動的に変換状態に入る。

Eibun_henkan

・動作

 「英字/カナモード時の変換/無変換操作」の項目で、「かなモードへ移行する」のチェックを外す。(注)

 (注)「変換/無変換を行なう」にチェックが入っているが、後の快速親指シフトの設定で変換キーに「空白入力」の機能を割り当てるので、通常の変換はできない(ただし、無変換と予測変換は可能)

 また、「無変換キーによるモード変更」で「モード変更しない」を選択(かなモードに変更するには「ひらがな」キーを押せばよい)

Eibun_dousa

・快速親指シフト

 快速親指シフトの設定ボタンを押し、「キー動作拡張」タブをクリック。英字モードのときの親指右/変換の設定を「空白入力」にする(IME Offの時は、両方とも「空白入力でも構わない)

Eibun_kaisoku

 なお、かな入力時に戻ったときのために、機能キーを適宜、追加・修正しておいた方がいいかもしれない(Shift+変換で「確定」、Shift+Spaceで「全角入力」など)。

 修正の仕方については、こちらなどを参照のこと。

・この設定の効用

 この設定によって、英数モード時に変換キーでも半角スペースを入力できるようになる。これで英文の入力がかなり楽になるはずだ。

 ちなみに、上記の快速親指シフトの設定で無変換キーにも「空白入力」の機能を割り当てれば、英語キーボードとほぼ同じサイズのスペースキーが確保できることとなる。

 しかし個人的には、無変換キーは英数モード時も使用できるようにしておくことをお勧めする。固有名詞などを無変換キーで確定すると、入力予測辞書に登録され、予測変換で指定することで打鍵数を大幅に減らすことが可能となるからである。(注)

 (注)英数モード時は入力予測/予測変換は可能だが、通常の変換操作は行なえない(もちろん、かなモード時は可能)
 ただし、「Ctrl+変換」の機能(入力予測時の次候補への移行や、記号入力による自動変換時の語尾変換)は作動するようだ。

 もちろん、かなモードで日本語を入力することもできる。しかし、文字幅を半角に指定しているので、数字や記号が最初は常に半角になったり、段落冒頭の字下げに全角空白の機能キーで入力してやる必要があるなど、日本語入力の操作性はやや落ちることになるかもしれない。

 しかし、英文入力がメインならそれで十分だろう。

・小括

 このように環境(キー)スタイルを英文入力用に変更してやれば、専用キーボードでも通常のキーボードと同等の(あるいはそれ以上の)操作感覚で英文を打てるようになるわけである。

 この事実を、親指シフターはもっと力説しても良いように思う。

対策2 やまぶきRとの併用(日本語入力がメインとなる場合)

 それでは、日本語入力がメインで、英字は単語かせいぜい短い英文くらいしか入力しないようなケースはどうだろうか。筆者自身は以前も書いたように、JapanistとやまぶきRの併用で対処するようにしている。

 これによってかな入力状態でも、Shiftキーを打つことで一時的に英字(及び英字記号)を入力することが可能となり(しかも半角で表示される)、変換操作や無変換で自動的に元のかなモードに戻るので、日本語入力の延長線上で英字を入力することが可能となる。(注)

 (注)設定などの詳細については、こちらの記事を参照のこと。

 ちなみに英字入力時の(半角)スペースについてだが、通常の空白キー(変換の右隣)で入力する操作に、自分の身体を慣らしてしまった(汗)

 以前は(上の英文入力用の環境スタイルと同様)、英字モード時には変換キーで「空白入力」をする設定にしていたのだが、かなモード時と英字モード時の操作性がずれることで入力ミスが増えてしまい、結局、元のかたちに落ち着いたというわけである。

 日本語がメインで英字は単語か短い文章しか入力しない場合は、基本的にこの設定(キー割当)で十分だろう。

2 外來語の入力について

2・1 難儀な拗音の入力

 NICOLAのもう一つの弱点だと筆者が感じていたのが、(これも欧文とかかわってくるのだが)外来語の入力である。特に「小さいァィゥェォ」(拗音?)を含んだ単語の入力については、違和感を覚えるケースが少なくない。

 たとえば、「フィラデルフィア」や「ヴィブラフォン」といった拗音を多く含む単語などは、入力しようとするとけっこう手間取ることがある。

 ただ、これらの単語を親指シフトで入力する際、ローマ字入力時よりも多く時間がかかることはほとんどない。せいぜい短い単語で入力時間がトントンになる程度である。(注)

 (注)入力に際しての主觀的認識と客観的事実とのズレについては、こちらの記事を参照のこと。

 また、これらの語を一度入力してしまえば、Japanistの入力予測辞書に登録されて、以後は(冒頭の1~2文字を入力すれば)予測変換候補の中から確定できるようになるので、あまり外来語の入力に神経質にならなくてもいいとは思う。

2・2 対処法:一時的なローマ字入力(やまぶきRとの併用)

 とはいえ、外国の長々しい地名や人名をいちいちかなで入力するのが鬱陶しく感じられる時があるのも、紛うことなき事実であろう。

 そんなとき筆者は気分転換も兼ねて、一時的にローマ字入力&変換を行なうようにしている。その手順は以下の通り。

・基本的な手順
  1. JapanistとやまぶきRを併用状態にする(設定などの詳細は、こちらの記事を参照)
  2. Shiftキーを押して一時的に英数モードに入り、入力したい単語の読みをローマ字で入力する
  3. 読みを入力してから変換キーを押すと、ローマ字の他に読みがな(場合によっては漢字や正しいスペルの英語)も変換候補に表示される
  4. 正しい候補を選択して、次の単語の読みを入力する(このときは既にかなモードに戻っている)
・ローマ字入力&漢字変換が可能

 外来語をカタカナで表示できるだけでなく、通常のローマ字入力⇒漢字変換の操作も可能となることが、この方法のミソである。

 たとえば一時的英数モードで「Kyouju」と入力し変換キーを押せば、読みがな(ひらがな・カタカナ)とローマ字(半角と全角、大文字と小文字の全ての組み合わせ)に加えて、「教授」「享受」といった漢字の候補も表示される。(注)

 (注)ちなみにこの方式で変換した場合は、漢字やカタカナの候補はたいてい後ろの方に表示されるので、変換候補が表示されたらすぐに「Ctrl+無変換」を連打すれば、選択するまでの打鍵数をかなる節約することができる。

・効用

 このように一時的にローマ字入力&変換をすることで、拗音の多い外来語もストレスなく入力することが可能となる。しかも、こちらも入力予測が可能となるので、2回目以降は入力操作がより簡単になるわけだ。

 また、この方法は単に気分転換になるだけでなく、ローマ字入力を忘れないためのエクササイズとしても機能する。(注)

 (注)(次回、詳しく検討することになると思うが)NICOLAの運用に最適な環境を会社などで確保することは、現状ではきわめて難しい。ローマ字入力に頼らざるを得ない機会も、少なからず生じることだろう。
 そうしたケースに備えて、ローマ字入力能力を極端に落とさないよう日頃から努めておくのも、親指シフターのたしなみだと思う(せつない話だが…)

 このように何かと便利であるので、ぜひ皆さんにもこの操作法(つまりは、JapanistとやまぶきRの併用)を試していただきたい。NICOLAの使い心地が相当改善されるはずである。(注)

 (注)ちなみにATOKでは、ローマ字入力での一時的な英数モードは可能だが、そのモードで入力した読みを日本語に変換することはできなかった。
 一方MS-IMEでは、一時的英数で入力した読みの漢字変換は可能だが、入力したローマ字の大文字・小文字や全角・半角への入れ換えはできないようだ(候補が表示されない)
 これらのことは、Japanistの操作性がいかに柔軟であるかを示すよい例と言えるだろう。

 (以下、次号)

|

« 習熟過程についての理論的考察(親指シフト導入記17) | トップページ | 自宅外でNICOLAを運用するには(上)(親指シフト導入記19) »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 英文/外來語入力への対処法(親指シフト導入記18):

« 習熟過程についての理論的考察(親指シフト導入記17) | トップページ | 自宅外でNICOLAを運用するには(上)(親指シフト導入記19) »