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2011年11月 9日 (水)

NICOLAの習得手順~熟達化について~(親指シフト導入記16)

4 タイプ練習(続き)~親指シフトキーボード入門~

 垂直方向(五十音)の入力練習が済んだら、今度は水平方向のタイプ練習に移ることにしよう。

 なお、以下の練習段階に入っても、五十音の入力練習(「あいうえお/おえういあ/ういえあお/えうおいあ」から「(小さな)ゃゅょ/ょゅゃ/ゅゃょ/ょゃゅ」まで)は継続すること(セット数は1回で構わない)

4・0 準備

 まず、以下のサイトから、「親指シフトキーボード入門」のファイルをダウンロードし、プリントアウトする(必須)。前半に親指シフトや入力方法についての解説が載っているので、ざっと目を通しておくとよい。

 次に、使用するエディタの表示を横書きモードに切り換える。例文が横書きの場合は、入力も横書きの方が認知上の負担がかからないからだ(もちろん、五十音の練習をする時は、縦書き表示に戻せばよい

 また、Japanistの入力予測機能も一時的に外しておくことを忘れずに(こちらを参照)

4・1 ひらがなの反復練習
・具体的な手順

 「練習問題2)ホームポジションの(中段のキー)を打つ」(24頁)から、タイプ練習を始める。オープニング問題はお馴染みの「はときいん」(笑)

 「はときいん」と入力した後、無変換キーを押して無変換状態にし、空白キーを入力する。面倒に思えるかもしれないが、短めの文節で区切るクセをつけるためにも、「文字列入力⇒無変換状態⇒空白入力」のサイクルを守ること。(注)

 (注)空白キーの入力がしんどいという人は、無変換状態からすぐに次の読みを入力してくれても構わない。窮屈な指遣いを続けていると、肩凝りや(ひどい場合は)腱鞘炎などを発症するおそれがあるからである。
 ちなみに空白キーについては、通常の文書作成の経験を積み重ねるうちに自ずとその位置と指遣いを覚えることになるので、あまり気にしないでもよいと思う。
 なおこの件については、こちらの記事も参照のこと。

 この作業を1問(1行)につき3セット行なう(自信のある人は、1セットから始めてくれても構わない)

 翌日以降は、済ませた頁のセット数は1回に減らす。ただし1回になってからも、各頁の入力は継続すること。

・注意事項

 入力時の注意事項は、五十音の練習時と同じ。早く打つことよりも、一語一語、正確に入力することを心がける

 既に五十音練習で大まかなキーの配置は覚えているとは思うが、初心を忘れないように。

4・2 漢字変換の練習
・具体的な手順

 練習15(37頁)から、漢字変換の課題が始まる(正確には、漢字とひらがなの組み合わせ)

 ここからは空白キーの入力はオミットすることにしよう。作業手順は以下の通り。

  1. 漢字の読みを入力して変換キーを押すと、複数の候補が表示される
  2. 「変換(次候補)」ないし「Ctrl+無変換(前候補)」キーで該当する候補を選択する(デフォルトの機能キーの割当については、こちらを参照)
  3. 該当候補を選択したら、(Enterなどで確定させずに)即、次のひらがなの読みを入力する。すると、変換操作中だった候補は自動的に確定される。
  4. ひらがなの読みを入力して無変換キーを押し、無変換状態になったら即、次の漢字の読みを入力する(無変換状態だったひらがなは自動的に確定される)
  5. 以下、同じ手順の繰り返し

 また、練習19(41頁)からは文章の入力練習が始まる。一文節入力したら変換するという(単)文節変換を心がけること

 また、文章入力の段階に入ったら、(これまで封印してきた)入力予測機能も復活させよう。通常の変換操作と予測変換(次候補は「Ctrl+変換」)とをシームレスに運用できるようにするためである。

4・3 注意事項

 以上の作業を1日に1~2頁くらいのペースで進めていけば、だいたい2~3週間ほどで、全ての工程を終えられると思う。

 読者の中には、上記のような反復練習を煩わしいと思う方も少なくないかもしれない。しかし、最初に基礎的なタイプ練習をしっかりやっておくと、その後の熟達化のスピードが格段に違ってくる。

 そのことを信じて、自分の自由にできる時間と相談しながら、地道に作業を続けていただきたい。(Z会の標語にもあるように)「継続は力」なのだから。

5 熟達化への道

 上記のタイプ練習を終える頃には、多少勘の悪い人であっても、親指シフトのキー配列をおおよそ把握できているはずである。しかし、実はこの段階こそ、初心者にとって最も難しい時期なのかもしれない

 まず、キーの配列はだいたい覚えたとはいえ、以前のように無意識的に入力できるレベルには、この段階ではまだ到達していない。頭に浮かんだ内容をスムーズに入力できないことで、多くの初心者がストレスを募らせることとなる。

 また、ローマ字入力との速度差を実感できないことで、親指シフトの効力に不信を抱く人も出てくるかもしれない(筆者自身がまさにそうだった)

 そこで以下では、初心者の陥りがちなこれらの問題とその対処法について、あれこれ考えていきたいと思う。

5・1 NICOLAの効力を実感できない
・外来語入力問題

 まず初めに、後者の問題から検討することにしよう。タイプ練習をひと通り終えてからしばらく経った頃、筆者が親指シフトに幻滅しかけていたことについては既に述べた(こちらを参照)

 (ローマ字入力に対する)NICOLAの入力効率の圧倒的な優位性を実感できなかったことが響いていたわけだが、筆者にそう感じさせた要因の一つとして、「外来語入力の問題」が挙げられるように思う。

 具体的に言うと、外来語(に由来する長めのフレーズ)を親指シフトで入力すると、妙にストレスを感じるのである。場合によっては、ローマ字入力の方が速いのではないかと感じることさえあった。

 以下、この問題について、もう少し詳しく検討していこうと思う。

・「小さいヤ行/ア行」の入力

 まず、外来語の全ての入力がストレスフルだったわけではない。詳細に吟味してみたところ、「小さなヤ行(ゃゅょ)」や「小さなア行(ぁぃぅぇぉ)」が含まれる文字列を入力する際に、こうしたストレスを覚えやすいことが分かった。(注)

 (注)実際、外来語でなくともこれらの文字を含んでいる単語については、入力に際してストレスを感じやすい。
 ただ、外来語にはこれらの文字を含む単語が多いので、「外来語の入力=ストレスフル」という認識が(いつのまにか)確立されてしまったのだろう。

 では、なぜこれらの文字を含んだ単語をNICOLAで入力すると、あのようにストレスフルに感じたのだろう?これについては、入力に際しての主観(的意識)と客観(的入力数)の乖離という観点から説明できるように思う。

・入力に際しての主観と客観のズレ

 たとえば、「コミュニケーション」という単語を入力するとしよう。親指シフトでは読みをそのまま入力することになるから、総打鍵数は9回である。

 これがローマ字入力となると、実際の打鍵数は15回に跳ね上がる(komyunike-syonn)

 ところが、ローマ字入力に完全に慣れた人の場合、15回もキーを叩いていることは意識されない。彼らの主観に上ってくるのは発音の音節数の方である。つまり、7拍で入力したかのように(主観の上では)感じられるのだ。

 このように発音の音節数を客観的な打鍵数であるかのように誤認することで、あたかもローマ字入力の方が速い(2拍少ない)かのように(主観の上では)感じられてしまったわけである。(注)

 (注)もちろんこうした錯覚?は、(ローマ字入力からNICOLAへの)移行期に特有の現象であって、後者の指遣いに習熟するに伴い、自ずと収まっていく類のものなのであろう。
 ただし「小さなア行」に関しては、NICOLAの場合、小指を使って同時打鍵するというかなりしんどい操作を余儀なくされるので、またローマ字入力がかなり自然な指遣いでこられの文字を入力できるので、入力に際しての違和感が最後まで残るような気がする。
 もっともJapanistを使っていれば、こうした外來語の入力もさほど気にならなくなる。一度正しい読みを入力してしまえば、後はJapanistの学習機能が働くことによって、難儀な文字列を入力せずとも予測変換で確定できるからである。

・対策

 上記のような外来語(小さいア行・ヤ行)問題以外にも、入力に際して様々な錯覚現象が生じ、それによってNICOLAの優位性を認識しにくくなっている側面もあるのかもしれない。

 主観のもたらすこのような錯誤に惑わされないための方策として考えられるのが、「客観的なデータを突きつけること」である。具体的には、NICOLAの指遣いにある程度慣れた時点で、タイピングの速度をもう一度測定してみるのだ。

 筆者自身は実際に測定することはできなかったが(親指シフトを導入する前にタイムを測定するのを忘れていた…(汗))、おそらくかなり早い時点で(主觀的にはまだローマ字入力の速度に追いついていないように感じられる時点でも)、入力速度が上回っている可能性が高い。(注)

 (注)但し、Japanistの入力予測機能は必ず復帰させておくこと。もちろん、測定文の入力に際しても、この機能は存分に活用すべし
 以前も書いたようにNICOLAの真の効力は、Japanist及び専用キーボードと併用することで初めて十全に発揮されるからだ。

 まあ、「親指シフトの効果を実感できない」という人のほとんどが、Japanistを使用していない人だと思われるので(筆者自身もそうだった)、そういう人はJapanistの導入を早急に行なうのが賢明だろう。

 とにかくこの段階で大切なのは、自分の主観にあまり囚われずに、NICOLAで入力する機会を着実に増やしていくこと。これについては、次節でより詳しく検討する。

5・2 熟達化を進めるために
・熟達化のプロセス

 タイプ練習の段階を終え、いざ自由に自分の思考を展開しようとしても、なかなかスムーズにキーボードが走ってくれないという経験は、おそらく誰もがすることであろう。

 要は、キーの位置はだいたい把握しても、それを思考と絡めながら十全に(無意識的に)作動させるだけの認知=身体システム(思考→指→入力→モニター表示の変化→認知→思考→指→…と循環・生成するシステム)がまだ十分に確立されていないことに尽きるわけだが、このシステムは一足飛びに構築できるものではない

 一時的にキーの位置を忘れたり、ミスタッチを繰り返したりといったもどかしい経験を日々積み重ねていくうちに、いつしかそうした誤作動が少なくなり、ふと気がつけばなめらかに自然な感じで入力できるようになっていたという、(意識下レベルで進行する)習熟化のプロセスをたどるしか、このシステムを確立する途はないわけだ。

 とはいえ、工夫によってはこのプロセスの期間を短くすることは可能だと思う。以下、ミスタッチの原因の究明から、この問題についての考察を開始することとしよう。

・ミスタッチの原因

 一連のタイプ練習を終えた後の段階で悩まされるのが、ミスタッチの問題である。これについてはもちろん、「新しいキーの配置をまだ体得しきれていない」という側面もあるのだろうが、それとは別の見方も可能であるように思う。

 筆者自身の経験では、読みを入力しようとした瞬間、ついローマ字入力の指捌きをしてしまい、失敗するというケースがほとんどだった。過去の入力スタイルの記憶が新しいスタイルでの入力を妨げていたわけである。

 タイプ練習を終えた段階というのは、新しい入力スタイル(NICOLA)が身体の中で次第に確立されていく反面、古い入力スタイル(ローマ字入力)も依然として根を下ろしているという、微妙な時期である。

 この新旧二つのスタイル(=認知・身体システム)が入力の際に干渉を起こすことで、ミスタッチや指遣いの一時的な忘却といった機能不全がもたらされることとなった…。そう考えられるわけである。

・対策

 となると、この問題(ミスタッチ)の対処法はきわめて簡単明瞭だ。文書の作成をすべてNICOLAで行なうようにすればよいのである。

 おそらく多くの初心者はこの段階まで、入力練習はNICOLAで行い、それ以外の文書作成はローマ字入力(以前の入力スタイル)で行なうという二重生活?を送ってきたと思う。

 しかしそのままでは、どちらのスタイルも中途半端になってしまう可能性が高い。入力スタイルに限らず、人間の認知・身体システムというのは、基本的には一つの経路でしか作動しないからである。(注)

 (注)同時並行処理しているように見える現象も、よく観察すればメインに作動しているのは一つの経路だけであって、もう一つの経路はメインの経路が作動している間は休眠に近い状態になっている可能性が高い(「ながら勉強」のケースを思い出そう)
 少なくとも、2つのシステムが共に100%の状態で作動することはあり得ないように思う。

 新しいスタイル(システム)を速やかに確立するには、古いスタイルを封印するに越したことはない。NICOLAを本気でマスターしようと思っている人は、タイプ練習の全課程を終えた段階から、全ての文書作成をNICOLAで行なうようにしよう

 最初のうちはミスタッチが多発するなど、文書を完成させるのに相当時間がかかるかもしれない。しかし、そこは我慢のしどころである。ローマ字入力の記憶が指から薄れていくのと反比例する形で、入力速度がアップしていくはずだ

 おそらく、ローマ字入力を封印してから一月も経たないうちに、NICOLAで自然に(無意識的に)入力できるようになっていることだろう。初心者の方はその日が遠からず訪れることを信じて、日々の練習や文書作成に励んでいただきたく思う。

・実践感覚の記録

 このようにタイプ練習の課程を修了してからは、基本的には「習うより慣れろ」の方針でやっていけばいいと思うが、日々の入力実践の中で気づいたこと・印象に残ったことをメモしておくと、後々役に立つ

 自分が新しいスタイルに習熟したかどうかは、後から振り返ってみて初めて分かることで、習熟しているその瞬間にそのことを意識するのはきわめて難しい。

 しかし、このように毎日の使用感を記録しておくと、(過去の記述と比較することで)自分が上達したかどうかを明確に把握できるようになる。もし自分が上達していることが分かれば、日々の入力作業にも励みが出てきて、上達に弾みがつくこととなるだろう。

 またブログなどを書いている人は、こうした操作感についての記事をアップすると、先輩からアドバイスをもらったり、他の学習者の励みになったりといった副次的な効果も得ることができるかもしれない。(注)

 (注)ちなみにこの「親指シフト導入記」も、筆者自身の使用感についてのメモ(日誌)がネタ素となっている。

 まあそこまで劇的な効果は生じなくても(笑)、こうしたメモを書くこと自体が、NICOLAに習熟する(新しい認知・身体システムを確立する)ための良き練習台となることだけは確かだ。

 些細なことではあるが、ぜひ実践していただきたい営みである。

 (以下、次号)

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