Japanistへの要望(親指シフト導入記11)
現在のJapanistの使い心地について、筆者は基本的には満足している。しかし使い込むにつれて、操作上の課題や改善を望みたい箇所もいくつか出てきた。
そこで以下では、これらの点について個別に検討していきたいと思う。次期ヴァージョンアップ(いつのことになるのやら(苦笑))の参考にしていただければ幸いである。(注)
(注)ただし、以下に挙げるのはあくまでも筆者自身の経験から導き出された私的な要望であって、多くのユーザーが言及している「64bit化」や「辞書の更新」といった要望については触れられていないことを、あらかじめお断りしておく。
1 初心者向けのマニュアル本の必要性
1・1 マニュアルがない?
・ヘルプはあるが…
Japanistの操作性にはワープロ專用機に由来する独特のクセがあるので、それに慣れるまでは、(他のIMEの使用感に慣れていた)初心者ユーザーは多少とまどうことになるかもしれない。
そんな時、設定や操作法について分かりやすく解説してくれているユーザーズ・マニュアルがあれば、初心者の不安も大いに和らげられるだろう。ところが、Japanistにはそのようなマニュアル本が付属していない。(注)
(注)パッケージ版に付いているスタートアップガイドには、セットアップ関連の記述しか掲載されていない。
一方、ソフトに付属しているヘルプには操作法の詳しい記述はあるものの、ザッと目を通して全体的な操作見通しを立てるのには向いていない。
・弊害
結局、初心者はヘルプを一から読んだり、ネットで情報を収集したりしながら、独学で操作法をマスターしていくしかないわけだが、こうした地道な作業に耐えきれずに元のIMEに戻ってしまったり、独学ゆえに偏った操作法を身につけてしまったりといった人が、少なからず生じているものと思われる。
こうした事態を避けるためにも、Japanistについての分かりやすいマニュアル本ないしガイドブックを、メーカー・サイドは用意する必要があるのではないだろうか。
1・2 マニュアルの構成
内容についてだが、絶対に必要なのが機能キー(ショートカット・キー)とその機能内容の対応表。これがあるだけで、操作の目安がだいぶ立てやすくなる。
また、前半には初心者向けの記述(お勧めの設定のガイドラインや基本的な操作法についての解説)、後半には中級者向けの記述(マニアックな裏技やカスタマイズの方法など)を割り当てれば、読みやすさが倍増するだろう。
経費的に冊子形式が無理であるなら、PDF形式でも構わない(あるいはJapanistのHPにマニュアル専用ページを作るとか)
次期ヴァージョンを発表のあかつきにはぜひ、この点についても検討していただきたく思う。
2 エミュレーション機能の強化
JISキーボードで親指シフトの使用を可能にする「快速親指シフト」のエミュレーション機能がやや貧弱であることは既に指摘した。(注)
(注)親指シフトキー関連や後退(Back Space)・取消(Esc)キー以外のカスタマイズはできない。
たいていのユーザーは、Ctrlと英数(Caps Lock)キーの入れ換えや、「Shift+Caps Lock」機能(大文字・小文字の入れ換え)の別のキーへの割り当てを、フリーソフトないしシェアウェアを使って行なっているだろう。(注)
(注)筆者自身はKeylay00というシェアウェアを使用している。新たにキーの配列を変更する際、いちいちパソコンを再起動させずに済むのが便利だからだ(ただし、最初の設定時には再起動が必要)
しかし、「快速親指シフト」でもこうしたキーの入れ換えが可能になれば、初心者にとっては非常にありがたいだろう。
この点についても、ぜひ検討していただきたいところである。
3 (一重)カギ括弧の変換について
これは他のIMEでは生じなかった現象なので、開発担当の方は特に留意していただきたい問題である。
3・1 先頭のカギ括弧だけ半角に
書名や曲名などを(一重)カギ括弧を使って入力する際、たとえば「かんごくのたんじょう」と入力して変換キーを押すと(この時点ではすべて全角表示)、「監獄の誕生」というように必ず前のカギ括弧だけが半角表示されてしまう。(注)
(注)「動作環境」-「文字入力」-「句読点/記号の入力文字幅」の設定で、カギ括弧(「」)は「常に全角」に、また、文字の幅も「全角」に設定しているにもかかわらず、である。
3・2 学習機能が機能しない?
もちろん、もう一度変換キーを押せばカギ括弧の変換候補を表示してくれるから、そこで変換し直せばいいわけだが、それ以降は他の文字列なら直前に確定した候補が最初に呼び出されるのに、先頭のカギ括弧だけは常に半角が選択されてしまうのである。
もちろん、(上述のように)2度変換キーを押して全角カギ括弧で確定するなり、最初にカギ括弧を入力した時点で無変換キーを押すなどすればよいわけだが、やはり1回目に変換キーを押した時点で全角のカギ括弧が表示されるのが、真っ当な作動の仕方であろう。(注)
(注)しかも、後ろのカギ括弧はなぜかきちんと全角で表示されるのが、また腹立たしい(笑)
些細なことかもしれないが、次期ヴァージョンアップの際にはぜひ、この問題の解決をお願いしたいところである。
4 入力予測辞書の強化
これは前回の記事でも書いたことだが、入力予測辞書が壊れやすい。原因は不明だが、一定期間使用していると、なぜか入力予測データ破損エラーの表示が出るのである。
もちろん、初期化してまた一から辞書を育てればいけば、元の使用感まで戻すのにそれほど時間はかからないわけだが、やはり初期化以外の対処法(バックアップ・ファイルから復帰できるようにするとか)も用意しておくべきなのではないだろうか。
入力予測はJapanistの肝となる機能なので、これが不安定であってはソフト全体に対する信頼を揺るがしかねない。
開発担当の方には、この問題への早急な対処を切にお願いする次第である。
5 「Shiftキーで一時的な英数モード」をかな入力時にも可能に
実は上の4つの要望はあくまで副次的なものであって、筆者が本当に実現してほしいのは以下の機能だったりする。
5・1 「Shiftキーで一時的な英数モード」という便利な技
Japanistのローマ字入力モードには、「小指Shiftキーの打鍵で一時的に英数モードになる」という、とても便利な機能がある。
(一時的な)英数モードで目的の英単語や記号を入力し、変換ないし無変換キーで確定すれば、自動的に元のモード(ひらがな)に戻るので、わざわざ英数キーでモードを切り換えなくても済むわけだ。
・かな入力では使えない
しかし、かな入力の設定ではこの便利な機能は使えない。かな入力時に英語を入力したければ、直前に英数キーでモードを切り換えて入力するしかない。
しかも場合によっては、大文字と小文字の切替を「Shift+Caps Lockキー」で行なわなければならなくなる。(注)
(注)英数モードから元のひらがなモードに戻るには、「無変換」キーを1回押してやればよい。設定はこちらを参照。
なお、大文字・小文字の切替については、英数モードでも変換/無変換が行なえる設定にしておけば、変換操作で該当候補を表示させることができる。詳しくはこちらを参照。
・モード切り替えに伴う作業効率の低下
グローバル社会の現在では、日本語の文書作成に際しても英字が頻出することは避けられない。そして、英字の入力の度にいちいち英数キーでモードを切り換えていては、全体の作業効率は最終的に著しく低下することになってしまうだろう。
かといって、この機能を使うためだけにまた元のローマ字入力へ戻るのでは、それこそ親指シフトとJapanistを導入した意味がなくなってしまう。
それゆえ、「Shiftキーで一時的な英数モード」という便利な機能を、かな入力モードでもぜひ可能にしていただきたいのだ。
5・2 想定される課題
・OASYS的な操作法とのバッティング
もちろん厄介な問題が存在するであろうことは、素人の筆者にも想像がつく。
たとえばワープロ專用機のOASYS以来のユーザーは、半濁音(ぱぴぷぺぽ)の入力を小指シフトキーを使って行なっている人が少なくないだろう(多数派かもしれない)
また、「小指Shift+文字キー」を使って検索を行なう操作に慣れている人も、かなり多いものと思われる。(注)
(注)Japanist(かな入力モード)では、「Shift+け(F)」で部首検索、「Shift+か(W)」で画数検索、「Shift+き(K)」で記号一覧の機能が割り当てられている。
部首検索と画数検索の場合は、「部」や「画」の後に検索文字やその部首の画数を入力してから(記号一覧の場合は「記」のあとに続けて)「Ctrl+と(J)」を押すと、それぞれの検索ウィンドウが開く(詳しくはヘルプを参照のこと)
なお、ローマ字モードの時には、入力するキーが異なるようだ(部首詮索の場合は単独のkwe、画数検索の場合はkwa、記号一覧はkwi)
このあたりの混乱を避けるためにも、ショートカット・キーの機能一覧表が求められる次第である。
・プログラミングの困難?
また、筆者は文系人間なのでよく分からないが、かな入力モード時に一時的な英数モードを折り込ませることは、プログラミング自体が難しいのかもしれない(他のIMEでも、この機能がついているのを見たことがない)
しかし、この機能を欲している人は(古くからのユーザーの中にも)少なからず存在するように思う。また、他社に先駆けてこの機能を実装すれば、Japanist(富士通)にとってユーザー数の回復の大きなチャンスになるかもしれない。
それゆえ、開発を担当されている方々にはぜひ頑張っていただいて、次期ヴァージョンではなんとかこの機能を実現していただきたい(もし実現したら、友人知人に宣伝しまくる所存である)
無謀なお願いかもしれないが、どうかご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。(注)
(注)ちなみに筆者は現在、Japanist(ローマ字入力)とやまぶきRを併用することで、「(かな入力の状態からの)Shiftキーでの一時的な英数モード」を擬似的に実現している。
設定などの詳細については次回の記事で触れる予定。
追記(2012年11月1日)
上記の3(一重カギ括弧)と4(入力予測辞書)の不具合についてですが、Japanist2003の最新版(64ビットに対応したもの)では修正されています。
上記のような不具合が生じている方は、Japanistを最新版のものにアップグレードされることをおすすめします(OSが32ビットでもちゃんと作動するはずです)。
なお、この件について情報の更新が遅れたことを深くお詫び申し上げます。
(以下、次号)
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コメント
>必ず前のカギ括弧だけが半角表示されてしまう。
私はJapanist2003と専用キーボードのKB211を使用していますが、カギ括弧は「常に全角」設定でちゃんと最初の括弧は確定されますよ。
投稿: 散歩人 | 2011年11月 5日 (土) 09時34分
散歩人さま
コメントありがとうございます。
私の場合、KB232とJapanist2003の組み合わせで、カギ括弧の設定も「常に全角」(文字幅も全角設定)にしているのですが、上記のように半角表示されてしまうのです(ちなみにOSはVistaで、Japanistにはアップデートを適用しています)
記事にも書きましたように、最初の読みを入力した時点(「だらくろん」)では全角表示されています。しかし、そこで変換を押すと「堕落論」というように半角になってしまう。
もちろん、もう一度変換を押せばカギ括弧の候補が表示されますから、そこで全角カギ括弧を選択すればいいわけですが、入力に没頭しているとついそのことを忘れて素通りし、原稿を書き上げてからそれに気づいてエディタでまとめて置換する、ということがよくありました。
多分、文字コードの問題が絡んでいると思うのですが、素人の筆者にはよくわかりません。
この現象が私だけの個別的な現象なのか、Japanistに内在する問題なのか(あるいは文字コードの問題なのか)、専門家の知見を聞きたいところです。
以上、取り急ぎご返答まで。
投稿: shibue | 2011年11月 5日 (土) 15時57分
不思議ですね。
XP SP3+KB211とWin98のJISノート+快速親指シフトという二つの環境で試してみましたが、「文字入力」の設定(だけ)を「親指シフト導入記7」と同じにしても再現されませんでした。
同じ現象が再現されたのは、カギ括弧の設定を「常に半角」にしてみた時だけでした。
私も素人ですのでこれ以上は分かりません。ただJapanistだけの問題ではないような気がします。
直接確定文字の全角にチェックを入れてみても駄目でしょうか?
投稿: 散歩人 | 2011年11月 6日 (日) 01時28分
散歩人さま
なるほど、散歩人さまは直接確定文字(の全角記号)にチェックを入れているわけですね。それなら納得です。カギ括弧を入力したら、その時点で即、確定されるでしょう。
しかし私の場合、記号も英数字も入力後に変換できるよう、直接確定文字には一切チェックを入れない設定にしています(詳細はこちらを参照))
たとえば、「Frame」というように半角英語をカギ括弧で括って表示する場合は、カギ括弧も半角にしたい(「Frame」というように半角の英単語を全角カギ括弧で括ると、IEで縦書き表示したとき、括弧と文字列の表記がずれて見苦しくなってしまうからです)
しかし、ここで上記のような設定(文字幅は全角、全角記号を直接確定文字とする)にしていると、最初に「と入力した時点で全角に確定されてしまいますから、これを半角にするには、後から再変換するという余分な手順を踏まねばならなくなります。
まあ、最初にきちんと全角カギ括弧で書名などを入力すれば、2回目以降は入力予測でその候補を選択すればいいだけのことですから、あまりゴタゴタ騒がなくてもいいのかもしれませんが、あえて問題提起的に書かせていただいた次第です。
以上、取り急ぎご返答まで。
投稿: shibue | 2011年11月 6日 (日) 13時06分
すみません、ちょっと言葉が足りなかったようです。
直接確定文字のチェックを全部はずしても最初の括弧だけ半角というのは再現されませんでした。だから不思議だな、と。詳しい方にお聞きしたいところですね。
投稿: 散歩人 | 2011年11月 6日 (日) 17時30分