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2011年10月27日 (木)

親指シフトエミュレータ、やまぶきR(親指シフト導入記3)

 周知のとおり親指シフト(NICOLA)では、親指で最下段のシフトキーを押しながら他の指で文字キーを押して入力する「同時打鍵」を多用するため、それに適したキーボードが必要となってくる。

 もちろん、専用のキーボードを使うのが望ましいのだろうが、値段がかなり張るので、初心者にとってはおいそれとは手を出しにくい。(注)

 (注)最も安価な携帯用のサム・タッチ(FKB7628)でも15000円程度、フルサイズのFMV-KB232が3万円弱と、なかなかのお値段である。
 さらに、日本語入力システム(兼・IME)のJapanistも同時購入するなら、そこに6000円(Amazonでは4000円程度まで値下がりしている)が加算されることになる…

 そこで根がケチな(笑)筆者はできるだけ安く済ませるために、手持ちのキーボードで親指シフトを使用する方法を探ることにした。(注)

 (注)今から考えると、このように「少しでも安く済ませよう」というケチ臭い根性が、筆者のNICOLAの習得を遅らせることとなるわけだが、その顛末については追ってご報告する予定。

1 親指シフトエミュレータ、やまぶきR

 通常のJISキーボードでNICOLAを運用するには、「親指シフトエミュレータ」というソフトを利用すればよい。ありがたいことに現在、これらのソフトのいくつかは無料で入手することができる。(注)

 (注)エミュレータのリストについては、ウィキペディアなどを参照のこと。

1・1 「やまぶきR」とその選択理由

 これらのエミュレータの中で筆者が選んだのは、「やまぶきR」というソフトだった。操作性がシンプルなのと、2chの親指シフト関連のスレッドでよくその名前が出てきたからである(例によって主体性のない理由で、我ながら情けなくなるが…(汗)

 なお、同じ作者によって「やまぶき」と「やまぶきR」という2つのソフトが同時に提供されている。

 後者は前者の派生型で、「かな入力用の配列が使えない代わりに、キー入力の取りこぼしの軽減と文字の出の高速化を実現」したとのこと。

 筆者はふだんはかな入力を使用していなかったし(完全に忘れてしまっていた(笑)、「Scroll Lock」キー一発で元のローマ字入力モードに戻れるのがありがたかったので、「やまぶきR」を採用することにした次第である。

2 インストールの手順

 「やまぶきR」のインストールはきわめて簡単である。ダウンロードしたファイルを適当な場所で解凍して、フォルダ内の「yamabuki_r.exe」を実行してやればよい。

 たとえばUSBメモリーからやまぶきを起動してやれば、会社のパソコンでも親指シフトの利用が可能となるわけである。(注)

 (注)但し、WindowsのVista以降でやまぶきRを通常権限で実行しているときは、管理者権限で動いているアプリに対してキーの入れ替えが効かない。その場合は、やまぶきも管理者権限で実行する必要がある。

3 基本的な設定

 設定の詳細についてはやまぶきRのマニュアル(「manual」というフォルダ内にある)に当たっていただきたいが、主な設定箇所は以下の2ヶ所。

3・1 配列の選択

 まず、「配列」タブをクリックして、「配列定義ファイル」の中から自分の実行したい配列を選択する。欄の右端の…ボックスをクリックすると、配列定義ファイルのフォルダが開くので、そこから適当なものを選択すればよい。

Yamabuki_hairetsu_setting

 NICOLAに関しては、デフォルトで3種類の定義ファイルが用意されている。(1)NICOLA、(2)NICOLA(タイピング)、(3)NICOLA(ローマ字入力)がそれだ。(注)

 (注)(2)は一応、タイピング・ゲーム用ということだが、定義ファイルをみた限りでは、(1)の配列との違いは見当たらなかった(筆者が気づかなかっただけかもしれないが)
 (3)は、「後退(BackSpace)」と「取消(Esc)」の位置が従来のままになっている((1)と(2)では、両者がホームポジションの列の右端へ移行)

 本来の親指シフトの配列に近いのは(1)だが、筆者は(この時点では)ローマ字入力の操作感をできるだけ踏襲したかったので、(3)のファイルを選択することにした。(注)

 (注)なお、キー配列の定義は後から自由にカスタマイズできるので、最初の設定段階ではあまり神経質にならなくてもいいと思う。カスタマイズの仕方については、以下を参照。

3・2 親指シフトキーの割り当て

 もう一つの主要な設定は、親指シフトキーの割り当てである。

 周知の通り専用キーボードでは、親指でシフトキーが打ちやすいよう、最下段中央部の配列が「親指左/無変換」「親指右/変換」「空白」という並びになっている。

 この操作環境をJISキーボードでも擬似的に再現するために、「無変換」「Space」「変換」キーのいずれかに、左右の親指シフトキーの機能を割り当てる必要があるわけだ。

 筆者自身は左親指シフトを「Space」キーに、右親指シフトを「変換」キーにそれぞれ割りふることにしたが、キーボードの種類や手の大きさ等によって、最適なキーの割り当ては変わってくる。

 結局はユーザー自身が実際にタイプしてみて、好ましい配列を探るしかないのだろう。

Yanabuki_oyayubi

3・3 キー配列のカスタマイズについて

 やまぶきを使って入力しているうちに、デフォルトのキーの配列に不満を覚えることがある。

 たとえば筆者は全角のコロンやセミコロンを文章で多用するのだが、これらの記号はデフォルトでは半角あるいは英数モードにしないと表記されない。

 また、親指シフト専用のキーボードではデフォルトで備わっている二重カギ括弧(『』)も、やまぶき(正確にはNICOLAのデフォルト配列)では、いちいち「一重カギ括弧」を入力して、それを変換してやらねばならない。

 しかしこういった不満も、配列定義ファイルを書き換えることで容易に解消することができる。その手順は以下の通り。

(1)新たな配列定義ファイルの作成

 やまぶきを解凍したフォルダ内の「layout」フォルダに、配列定義ファイルが納められている。

 最初の設定で選択したファイル(筆者の場合は、「NICOLA-F(ローマ字入力)」)をコピーして、ファイル名を書き換え、編集作業に入る。

(2)ファイルをテキスト・エディタに関連づけ

 選択したファイルを右クリックして、「プログラムから開く」を選択。推奨するプログラムに望ましいソフトがなかったら、「他のプログラム」の中から探す。

 そこにも適切なものがなかったら、「参照」ボタンを押して望ましいプログラムの実行ファイルを選択。

 「この種類のファイルを開くときは、選択したプログラムをいつも使う」にチェックを入れておくと、以後、ダブルクリックすれば自動的に望みのソフトでファイルを開けるようになる。

(3)配列定義ファイルの編集

 使用したい文字や記号を「'」(半角アポストロフィー)で括ったものを、該当個所に書き加えてやれば、キーの定義を変更できる。

 以下は筆者の定義ファイルの例である(右端の下向きの↓は、エディタの改行マークなので無視して下さい)

Yanabuki_teigi_file_2

 二重カギ括弧や(セミ)コロン、旧字体の「ゐ」や「ゑ」、小さな「ゎ」などが新たに加えられていることが分かる。(注)

 (注)ただし、これはあくまで8月までの定義ファイルで、Japanistの導入後は、(二重)カギ括弧の設定はデフォルトの位置に戻している。
 定義ファイルの設定についても、使用しているIMEやキーボードの操作性と突き合わせながら、少しずつ自分好みのものに仕上げていくしかなさそうである。

(4)配列定義ファイルの選択

 配列定義ファイルの編集が終わったら、保存してファイルを閉じる。

 タスクトレイのやまぶきRのアイコンをダブルクリックして設定画面を開き、新しく作成した配列定義ファイルを選択して「適用」ボタンを押せば、先ほど定義した文字や記号が直接、入力できることとなる。

4 使用感について

 やまぶきRのおかげでめでたく、手持ちのJISキーボードでもNICOLAの入力が可能となったので、6月の半ば頃から親指シフトのタイピング練習を開始することにした(練習内容の詳細については後述)

4・1 ATOKでも大丈夫

 筆者がふだん使用しているIMEはATOKである。周知のとおり、ATOKでは「Space」キーでも漢字の変換を行うため、親指シフトキーの入力と機能が干渉することもあるのではないかと、当初は危惧していた。

 しかし実際に使用してみると、親指シフト関連の動作で不都合が生じることはほとんどなかった。

 同時打鍵の場合は文字入力、単独打鍵では未確定状態で漢字変換、確定状態では空白入力と、やまぶきRがしっかりと機能を切り換えてくれたからである。

4・2 安定した動作
・やまぶきは重い?

 また、2chのNICOLAスレッドなどには、「やまぶきは重い」などの意見もちらほら見受けられた。しかし実際にタイピングしてみると、動作が重いと感じることはほとんどなかった。

 たしかに入力し始めの段階でローマ字の痕跡が残ることはあったが、2~3語入力していくうちに、そうした現象はほとんど生じなくなる。(注)

 (注)パソコンが十分なスペックを備えていれば、最初からこうした現象は生じないのかもしれない。

・動作がおかしくなったら

 また、ローマ字入力とNICOLAの切り換えを繰り返すと、後者が作動しなくなることが稀にあった。

 しかし、タスクトレイに表示されているやまぶきRのアイコンをダブルクリックして起動すれば、すぐに元の状態に戻った。

 上記のような例外的な現象を除けば、やまぶきRの動作は総じて安定していたと断言することができる。(注)

 (注)ちなみに、この記事の草稿を書いたのは、まだJapanistの導入前のことで、筆者の設定もATOKの使用を前提としたものとなっている。
 その後、筆者はJapanistとやまぶきRを併用することとなるわけだが、その詳細については、後日、記事にする予定である。

 (以下、次号)

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コメント

このページの中で「NICOLA(ローマ字入力)」という記載がありましたが、親指シフトを使うのはひらがな入力をしたいからだと思っているので、どいういう意味か分かりません。
NICOLAでローマ字入力のメリットを教えて下さい。茶谷廣一

投稿: 茶谷廣一 | 2013年4月21日 (日) 16時10分

 茶谷さま


 ブログ主の渋江です。


 さてご質問の件ですが、結論を先に申しますと、「NICOLA-F(ローマ字入力)」というレイアウトとローマ字入力とは直接的な関係はありません


 この記事の草稿を書いた時点でのやまぶきRには、(1)NICOLA、(2)NICOLA(タイピング)、(3)NICOLA-F(ローマ字入力)という3つの配列が確かにレイアウトに含まれいたはずなのですが、最新ヴァージョンでは、「NICOLA-F(ローマ字入力)」ではなく単に「NICOLA-F」という名称になっています


 (注)おそらく作者の方も誤解を招くと思って、(ローマ字入力)の部分を削除したものと推察されます。


 記事にある「NICOLA-F(ローマ字入力)」というのは、富士通の専用キーボードのように、既に「ん(;)」の右隣りに「後退」キーと「取消」キーがあり、「Enter」キーの上に「]」キー、下に「@」キー、「後退」キーの上に「:」キーがあるキーボードに適した配列のことです。


 (注)ちなみに、通常の(親指シフト用ではない)日本語キーボードでこの配列を使うと、「後退(Back Space)」キーと「取り消し(Esc)」キーは元の位置(右上と左上)のままになります。


 この記事の草稿を書いていた時点ではまだ親指シフトの練習を始めたばかりで、「後退」キーと「取り消し」キーの位置にかなり違和感があったので、専用キーボード向けのこの配列を敢えて使うことで、この二つのキーを従来の位置のままで使用することにしたわけです(この時点では私はまだ通常のキーボードを使っていました)


 上記の記事で「ローマ字入力の操作感をできるだけ踏襲したかった」と書いたのは、かなが割り振られたキー以外の機能キーはできるだけ元の位置のままにしておきたかったという、ただそれだけのことを意味しています(誤解を招く書き方をして申し訳ありません)


 (注)もちろん、今だったらこんなアホなことはしません(笑)。「後退」キーと「取り消し」キーの位置は親指シフトの生命線の一つであり、この配列にこそ真っ先に慣れるべきだと思うからです。


 したがって、茶谷さまがもし通常の(日本語)キーボードを使って親指シフトの入力をしたいのなら「NICOLA」を、専用キーボードをお使いなら「NICOLA-F」を選択すれば(当面は)よろしいのではないかと思います。


 なお記事にも書きましたが、「NICOLA」と「NICOLA(タイピング)」の違いについてはよく分かりません(苦笑)。この件については、やまぶきの作者の方に問い合わせていただきたく思います。


 以上、取り急ぎご返答まで。

投稿: shibue | 2013年4月21日 (日) 17時49分

動作がおかしくなったときに検索でこちらへとお邪魔させていただきました。
記事を拝見して、どうにか自力でトラブルから脱出に成功いたしました。
本当に、ありがとうございました!

投稿: とおりすがりん | 2017年5月29日 (月) 09時57分

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