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2008年1月12日 (土)

Takayo『My Best Friends』再考(3) 各曲レヴューその1

3 各曲レヴュー

3・1 My Best Friends(作詞・作曲:MICA)
・概要

 アルバム中、作詞・作曲にTakayoのクレジットがない唯一の曲。自分が手がけたわけではない曲を、事実上のデビュー・アルバムに収録した(しかも1曲目に!)ということからも、この曲が彼女のお気に入りだったことが分かる。

 真家さん曰く「モータウンなテイスト」の軽快でポップなロック・ナンバー。いかにもライブ映えしそうな曲で、実際に昨年6月のTakayoのライブに参加した人の話では、1曲目とラストの計2回歌われ、サビの部分でジャンプする指示も本人から出されたりしたらしい(こちらのライブ・レポートを参照のこと)。

 今聞くと躍動感のある良い曲なのに、なぜ最初聞いたときには躓いて(つまずいて)しまったのだろう?おそらくそれには二つ理由がある。

・ミキシングにまつわる問題

 一つは上記のミキシングの問題。つまり、リズム隊の音が大きすぎてTakayoの声が負けているように聞こえてしまったことである。しかしこの件については、筆者が所有するプレイヤーにも問題があることが分かってきた。

 以前にも書いたが、筆者の持っているCDプレイヤーはBOSEのWave Radio/CD という機種なのだが、このプレイヤーは通常のプレイヤーよりも低音部がかなり強調されて聞こえるのである。

 Takayoの声が負けているように聞こえた原因の一端はそこにあった。試みに、パソコンでこの曲を聞いてみたところ、普通にいい音のバランスで聞けたのである(汗)。だから、おそらく通常のプレイヤーやiPodなどで聞く分には、何の不都合もないミキシングだったのだろう。(注)

 (注)ただ、やはりベース音はかなり強調しているような気がする。筆者のBOSEのプレイヤーで聞く限りでは、ベース・ラインが音割れ寸前になっている箇所もあるように聞こえるのだ。
 もっとも、筆者は音楽の素人なので、プロの耳からすれば全然OKの範囲内なのかもしれない。この点については、専門家のご意見をおうかがいしたいところである。

・移行期の歌唱法?

 二つめの理由はTakayoの歌唱法。サビの部分、特に「宝物なのは間違いない」の「ない」の部分が筆者にはかなり苦しそうに聞こえたのだ。それで、前回のレビューでは「彼女の声質の欠点(高音部での声量のなさや、エンド・トーンが下にずれるクセ)が露骨に出てしまっている」と書いてしまったのだが、Takayoファンに言わせると「あれがいいんだ」「彼女の味なんだ」ということらしい(笑)

 で、筆者の現在の見解だが、ZONE時代の歌唱法から新しい歌唱法へと移行する過程での中間形態を表しているのではないか、というものである。

 Takayoがソロ・デビューにあたって、MICAジョンの指導の下、ボイス・トレーニングをかなりしっかりやったということは前回のレビューでも触れた。その成果は1stアルバムのミディアム・テンポの曲(「Rebirth」)やバラード(「Thank You」)によく表れていると思う。

 しかし、「My Best Friends」のようなアップテンポのロックを新しい歌唱法で完全に歌いこなすところまではまだ至っておらず、喉をより使ったZONE時代の歌唱法に部分的に戻ってしまったのではないか。それがサビのところで表れているのではないか。そんな風に思えるのである(考え過ぎかもしれないけど)。

 たぶん、最初聞いたときには、そのどっちつかずさが「ボーカル力の低下」のように感じられてしまったのだろう。しかし、2ndに対する視点が変わった現在では、これもこの時点でのTakayoの素顔として温かく?受け止めることができる。

 そう、彼女はまだボーカリストとしては成長の途上にあるのである。そのことを弁えずに、彼女に「完成品」を求める方が間違いだったのだ。そう意味づけられるようになってからは、サビの部分もあまり気にならなくなってきたから、人間の耳とは当てにならないものである(笑)。

・フレンズ≠ZONEのメンバー

 最後に歌詞についても少し触れておこう。この曲の作詞を担当したのはMICAジョンであるが、Takayoが短大時代の友人を念頭に置きながらこの曲を歌っていることは、真家さんとのインタビューの中で彼女自身が明言している。

 で、別のインタビュー(サンスポ5月11日付けの記事)では、「フレンズはZONEのメンバーではない」「ZONEのメンバーとは連絡を取っていない」ことまで書かれて、そのことが一部のファンの間にショックを与えたことについては前回のレビューでも触れた。

・ZONE時代の人間関係

 まあ、動揺するファンの気持ちも分からないでもないが、冷静に考えると、Takayoの言うことももっともなのかもしれない。

 ZONE時代、彼女はリーダーでありグループを引っ張っていく立場にあったわけだから、他のメンバー達の悩みや愚痴を聞いてあげることはあっても、自分の内面(悩みや不安)を相手に晒すようなことは、メンバー達に動揺を与えかねないわけだから、責任感の強い彼女の性格からいってまずありえないことだったろう。

 その意味で、TAKAYOにとってZONEのメンバー達は、後輩であり仕事仲間であり同志ではあっても、対等に愚痴や悩みを言い合い聞き合うような「いわゆる友だち」ではなかったということになる。そして、そのこと自体は何ら問題ではあるまい(注)。

 (注)おそらくもう少し年代が上になれば、年齢がある程度違っていても友人関係を取り結ぶことができるようになるのだろう。
 しかし10代の頃は、日本のように年齢規範が強い国では特にそうだが、一学年違うとそれだけで人間関係が先輩/後輩、上級生/下級生関係に還元されてしまいがちだ。自分の中高時代を思い出していただきたいのだが、どんなに信頼できる相手であっても、部活の後輩のことを「友だち」と思えただろうか?
 ましてやTAKAYOとMIYUの場合、年齢が三つも離れているのだから(TAKAYOが高三のときMIYUは中三)、「友だち」関係になる方がムリというものだろう。一つ違いのMIZUHOやMAIKOにしても、TAKAYOにとっては「仕事仲間」や「同志」というイメージの方が強かったのかもしれない。
 ただし、TakayoがZONEのメンバーのことを「友だち」以外のカテゴリーで捉えていたとしても、それは彼女が他のメンバー達のことを蔑ろ(ないがしろ)にしているという意味ではけっしてないことは、ここで強調しておきたい。
 近年は、友人や恋人・家族のような「親密な関係性」こそが人間関係のなかで最も大切と考える風潮が強いが、それは一つの偏った見方に過ぎない。
 毎日、あるいは数時間おきにメールで互いの存在を確認しないと維持できないような脆い「親密な関係性」にある人よりも、今は連絡を取り合っていなくとも、かつて同じ目的に向かって懸命に切磋琢磨しあった「仕事仲間」や「同志」の方が、実は互いの事を本質的に理解しあっているのかもしれないのである。

・近すぎる関係性の難点

 当時、彼女が自分の悩みや不安を相談する相手がいたとすれば、その相手はランタイムの近しいスタッフか家族ということになるのだろうが、実はこのように余りにも近しい人というのは、かえって自分の内面をさらけ出しにくい相手でもあるのだ。相手に心配かけたくないとか、相手が自分に対して持っているイメージを壊したくないというような配慮がどうしても働いてしまうからである。

 かといって、もう少し距離があって気軽に愚痴をこぼせるような「友だち」がいなかったことは、Takayo自身が真家さんに告白している。だからZONE時代のTAKAYOは、自分の(本当の)悩みや葛藤を誰にも吐き出せずにいた可能性が高い(注)。

 (注)ZONEの脱退についても、TAKAYOはぎりぎりまで一人で悩んだあげく、ようやく自分を納得させてその旨をスタッフに伝えたのではないだろうか。
 で、打ち明けられた側からすれば、それが「突然の決意」であるように見えるから、彼女にその決意をさせた背景を妙に勘ぐったり、「なぜもっと早く相談してくれなかったんだ」「私たちを信頼していなかったのか」という怒りにも似た気持ちも湧いてきたり、ということもあったことだろう(当時のTAKAYOからすれば、相手が大切な人であるからこそ、かえって相談しにくかったのかもしれないのだが)。
 現在のTakayoとランタイムとの微妙な関係は、案外このあたりのことにも原因があるのかもしれない。おっと、妄想モードに入ってしまったので話を戻すことにしよう。

・友だちへの想い

 そんな彼女が初めて気軽に悩みや愚痴を言い合える相手と出会ったのが短大時代だったのだろう。そう考えると、基本的にはMICAジョンの作品であるにもかかわらず、Takayoがこの「My Best Friends」を気に入った気持ちも良く分かる。

 おそらく、歌詞の内容も彼女にとってはものすごくリアルで共感できるものだったのだろう。そう考えると、親友と呼べる人があまりいない筆者のような人間にも、この曲がものすごく生き生きとした色合いをもって聞けてくるのである(笑)

3・2 Butterfly(作詞:Takayo、MICA 作曲:MICA)
・オリジナルとの比較

 1曲目のレビューが長くなりすぎたので、以下の曲についてはできるだけ簡潔に述べることにしたい(笑)。2曲目の「Butterfly」だが、上記でも述べたように、もともと1stの1曲目に収録されていたオリジナルを、よりロック色を強めたアレンジで収録し直したもの。

 両者を聞き比べてみると、こちらのバージョンの方がテンポが若干速くなっており、ロック的な躍動感も増していることが分かる。ベースを強調する件のミックスも、このバージョンについてはよくフィットしていると思う。

 Takayoのボーカルもオリジナルでは正確に歌うことで精一杯の観があったが(注:彼女の声域の全体を使う難しい曲であるらしい)、新しいバージョンではより力強さが増し、最後の方ではフェイク(Yeah~)も入れるなど、余裕に満ちた歌い方をしている。

 おそらくライブなどで何度も歌ううちに、この曲を次第に自分のものにしていったのだろう。そんな成長過程がオリジナル・バージョンとの比較から推測されたりもする。

・歌うとハイになれる曲?

 このバージョンと6曲目のピアノ・バージョン、そしてオリジナル・バージョンと、都合3回披露されていることからもうかがわれるように、「Butterfly」という曲はこの時点での彼女の一番のお気に入り(テーマ曲みたいなもの?)だったのだろう。

 しかし、実はこの曲は念入りに作り込まれた曲ではないらしい。インタビューによると「バースデイ・ライヴ時に、[曲数が足りないので]急遽作った曲」とのこと。作曲のクレジットはMICAジョンになっているから、Takayoがギターか鼻歌(?)で提示した基本的なコードやメロディーにMICAジョンが肉付けをしていったということなのだろうか。

 しかし、そんな急拵えの曲とは思えない魅力を「Butterfly」は持っている。実際にこの曲を口ずさんでみるとよく分かるのだが、Aメロは非常に低くて歌いにくいものの、Bメロ、そしてサビへと進むにつれて、すごく気持ちよくなってくるのだ。

 また、その気持ちの良さが歌詞とうまくマッチしていたりもする。そう、地面から飛び立った蝶が高く舞い上がっていくような、そんな気持ちにさせてくれるのだ(ちょっと大袈裟?)。Takayoが「ライヴでやって一番楽しい」という気持ちも頷ける。

 CDを購入されたあかつきには、皆さんもぜひ彼女と一緒に歌ってみていただきたい。けっこうハイになれます(ヤバイ意味ではなく(笑)

 (以下、次号)

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